目的の白い黒熊を見ることが出来た。
それも最後の逆転ホームランのような形で。。
日本を発ってからの日々は・・・・・
嵐で飛行機が飛ばない
やっと現地に入っても、ボートが故障してしまう
念願のスピリットベアーが現れない日が1日、2日と続く
そんな毎日は気持ちの奥の方を少しずつ絞っていく。
それでも前向きになれたのは、みんなの目的が
同じだったからだろう。
3日目も午前中が終わり、待つのはやめて
こちらから探しに行った時から流れは変わった。
その時は突然訪れた。
滝までハイキングをして黒熊の親子を発見し、
しばらく見て戻ろうとしていた時、メンバーの一人が叫んだ。
『 いたー! 』
『 今、後ろを白いのが横切ったの! 』
距離にして5mくらいの場所だ。
『 あっちに行った! 』
少し声が震え、大きな岩の向こう側を指している。
僕も少し震えながら、行ってみましょうと岩場を
乗り越えるためにメンバーの手を取り、大きな
岩の上に登った。
どこだ?
しばらく待っていると滝の向こう側に白いクマが
ゆっくりと現れたのだ。
ずっと頭の中に思い描いていた登場の仕方よりも
それは衝撃的だった。
何しろ、僕たちのすぐ後ろを音もなく通り過ぎ、
それに気が付かなければ見過ごしていたかもしれないのだから。
動画を撮影する手が震えて上手く撮れないと
嬉しそうに言いながら体を硬くしているメンバーを見て
僕は心から思った。
この仕事をしていて本当に良かったって。
その後、元々待機していた場所にもこの白い熊は現れ、
同時に違うスピリットベアーも現れたりして、結局
沢山の黒熊と3頭のスピリットベアーを観察することが
出来たのだ。
何処に出かけても思う。
今度はいつ来る事が出来るだろうって。
感傷的な言い方だけど、何にでも終わりがあるのを
知っているからこそ、貴重な時間だ。
それは、大好きな本の残りページが少なくなって
来たときの寂しさに似ている。
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