2011年8月19日金曜日

日曜日

またラーメンネタで申し訳ないのだけれど、
僕のうちのそばにラーメン屋さんがある。
そこは僕が高校生の頃から通っているので、
かれこれもう25年の付き合いになる。
親戚でも無いのに、自分の事を高校生の頃から
知っている人は近所でも少なくなってきたけど、
この店に行くのは少々覚悟がいるのだ。
何しろこの店の店主は若いときは物凄い怖かった。

最近あまり見なくなったパンチパーマをかけ
滅多に話さず、いつも目を細め眉間にシワを寄せていた。
長距離トラックの運転手を相手にしているから
ラーメン屋なのに朝5時から空いていて、この時間の
この店は店主も含め全体的に “なんだよ?” っていう
雰囲気が渦巻いていた。

学校を卒業し、自宅にあまりいなくなったり、
北海道やカナダにいたりした期間も
うちに帰ると必ず顔を出していたのは、この店くらいだ。

僕が大人になるにしたがって、少しずつ店主は
カウンター越しに話し掛けてくるようになった。
【 おめえ、今なにやってんだ? 】

というのが、決まり文句だ。
その度に僕が違う場所にいたり、カナダにいるって言うと、
最後には必ず

【 しっかりやれよ。 】

と、言ってくれた。

僕は知っていた。
店主夫婦にも息子がいて、どうしょうもなく悪だった。
店の中で親子喧嘩していたこともあった。
だから余計に優しい言葉に聞こえたんだろう。


ついこの前、母親を連れてラーメンを食べに行った時のこと。

いつもここでは決まってネギラーメンの中を頼む。
















昔から変わらない優しい味だ。

食べ終わって店を出ようと母の手を取って店を出ようとしたら、

【 おめえ、親孝行じゃねえかよ。 】

何て返して良いか分からずただ笑い返して店を出たんだ。

ラーメンを食べるほんの30分を、それでも25年続けて来た。
それぞれに色んな事があって、それぞれ歳をとり、
それぞれの今があり、それでもまだこうやって変わらない
ラーメンを食べられるって、ただただ凄いことだと思う。

いつもと変わらない、何でもない日曜日だったけど、
いつまでもあって欲しい日常でした。




2011年8月11日木曜日

さあ、行こう

オオカミのツアーでは、残念ながら完全に
満足いく結果は得られませんでした。
巣穴で子供たちを見ることが叶わなかったのです。

ご参加いただいた皆様、期待に応えられずに
本当にすいませんでした。


そこまで飛行機を4回乗り継ぎ、トラックに揺られ、
ボートに乗ってやっと辿り着いた大きな湖の
ほとりにキャンプを張りました。

僕たち以外の人間には会うこともありません。
猛烈な蚊と白夜の日射しに歓迎されながら
過ごした日々が今でも頭から離れないのは、
あそこまで行った者にしか感じる事が出来ない
旅だったからだでしょう。

反省や悔しさだけでは語れない思いが今も
心を占めています。


それでも今は夢を見ることを辞めたくはないと
思っています。

それは僕も皆さんも扉の向こう側を知ってしまって
いるからだと思います。


こんなことがありました。

クタクタになって辿り着いたオオカミの巣穴に
近付いた時、母親が現れました。














彼女はモノトーンのツンドラの世界で光輝いていました。
思い入れもあったから、ちょっと神々しくさえ見えました。

北極オオカミです。

そしてこちらに向かって吠えながら近付いたり離れたりを
繰り返し、ついには遠吠えをしたのです。












遠吠えだけは聞いたことはありましたが、
その姿を目の当たりにした時、体に痺れに近い衝撃が走り
暑かったにもかかわらず、鳥肌がたち肌寒くさえ感じました。

少なくとも僕には自分の夢の扉が開いた事がはっきり分かった
瞬間でした。
驚きやら喜びやら色んな感情が入り交じった顔で、
ツアーを手伝ってくれたガイドの友人を見ると
彼女も同じ表情をしていたのです。

きっと僕たちはこんな瞬間を知ってしまっているのです。



ツアーが終わって1ヶ月近く経ち、星を見たり、
暖炉の炎を眺めたりしながら考えたこと。





















それは諦めずに前に進もうって事。

そう思えるように支えてくれた全ての事に
心から感謝します。